鳳蝶(アゲハチョウ)に魅せられて
S.Y(狭山台・S46法卒)
以前、大阪に住んでいた孫娘は幼い頃からてんとう虫やダンゴ虫の昆虫に興味がありました。
或る日小学校に夜盗蛾(よとうが)の幼虫を持って行ったから、さあ大変。
クラスはキャーキャー、気持ち悪いの大合唱。
その内、隣の家の柚(ユズ)についたアゲハの幼虫に興味を持ち、育て始めました。
蝶々は卵・幼虫・蛹・成虫の過程を経る完全変態の昆虫です。
日本のアゲハは20種類ほどで、よく見かけるのはナミアゲハ・キアゲハ・アオスジアゲハ・クロアゲハの4種類です。種類によって食草が違います。
ナミアゲハはユズやミカン、サンショウなどの柑橘類、キアゲハはニンジンやパセリなどのセリ科の植物、アオスジアゲハはクスノキに卵を産み付けます。
自然界でのアゲハチョウは100匹産み付けても還るのは1匹と言われています。殆んどが、天敵等にやられてしまいます。
アゲハの天敵は、カマキリ、とんぼ、蜘蛛等。また、寄生蜂や寄生蠅が幼虫に産卵し、成長した蛹に穴を開けて出てきます。
娘夫婦が転勤で東京に戻り、我が家でもアゲハの育て方を孫娘に教わり、おっかなびっくりやり始めました。羽化させたのは殆どがナミアゲハです。
柚の葉に産みつけられた白い卵が黄色から黒くなり幼虫となり、5回の脱皮を繰り返して青虫(いもむし)になります。青虫になると、食欲旺盛で、ユズやミカンの葉を食べるシャーシャーという音が聞こえ、あっという間に葉の半分を食べてしまいます。
アゲハの一生は卵から幼虫までが、4~5日、幼虫から蛹までが2週間程度、蛹が2週間弱、成虫が2~3週間といった繰り返しで、秋に生まれたのは蛹で越冬し、春に飛び立ちます。
アゲハは蛹になる前に未消化の食べ物を全て排泄し下痢をします。
蛹になるために敵の攻撃を受けにくい所、暗い所を目指して大行進が始まります。落ち着くと前蛹段階に入って糸を引き、蛹になります。
蛹になってからの2週間で中の組織がすべて変わります。
アゲハの行動範囲は5~600mですが、テリトリーがあり、オス同士だと、小さなアゲハは追いやられてしまいます。
逆にメスを見つけるとランデブーが始まり、交尾は半日以上かかることもしばしばです。
またオスは車の初心者マークを見つけると、メスと間違えてぶつかってしまうことがあります。緑、黄、黒の模様が関係しているようです。
去年はコロナ禍、ナミアゲハ35匹、キアゲハとアオスジアゲハは1匹ずつ飼育しました。
ナミアゲハのうち無事に飛び立って行ったのは31匹でした。
3匹は、寄生蠅にやられサナギのまま死んでしまいました。あと1匹は羽化する時に脚を滑らせ羽根を痛め、飛べない体になってしまいました。
アゲハの口先の螺旋を爪楊枝で伸ばし、薄めたポカリを毎日飲ませ、それでも2週間生きてくれました。飛びたいのに飛べない、可哀想な一生でした。
世話をしているとやはり、情が移りアゲハが死んでしまうと凄く悲しくて、落ち込みました。
アゲハの羽化の瞬間は感動ものです。狭い蛹から濡れた体で出現し、その綺麗な姿は女神の降臨といった感じです。羽根が乾くのに4時間程かかり、バタバタしながら自分が飛べるかどうかを確認していきます。
巣立っていったアゲハは庭に花があると蜜を吸いにまた戻ってきます。
まるで、育ててくれたお礼を言いに来たかのようで、嬉しさが湧きあがりました。